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第10回 夕学(せきがく)の会   5月25日(水)

特別講演「食品の商品開発・流通・販売戦略について」       
神戸フーズクリニック 代表取締役社長 古山勇起 氏
  第10回目を記念して、今回は、昨年神戸フーズクリニックを立ち上げられ、代表取締役社長として東奔西走の日々を送っておられる古山勇起氏に、その間を縫って特別講演をお願いしました。
 古山さんは、長年大丸百貨店、食品部門のバイヤーとして鋭い観察力と行動力を発揮され、ご自身がほんものと直感した食品にかける愛情と情熱には右に出る人がいない、として業界では知られた存在でした。その手腕から、大丸ピーコックの役員を経られた後、培って来た経験を生かされ、自ら食品に関するプロデュースやコンサルタントなどを行う神戸フーズクリニックを起業されました。
  なぜ神戸とつけられたのか?「全国視野では神戸はブランド、地の利の良さから大阪市内にオフィスは置きましたが、大阪としたのでは食品関連としてのブランド価値は神戸ほどにはありません。」大阪スローフード協会会員の面々!を前に、控えめにですがそうはっきりおっしゃった事で、より会員の好奇心に火がつき、皆身を乗り出してお話に聞き入りました!!古山さんの数多の実践の中から今回の講演は、日本の伝統食品でありながら現代人の嗜好に合わなくなった、またその時の流行にのったことでその本質が失われ、結果として評価や売上が低迷してしまった食品の復活のプロセスについてです。

       
  三輪そうめん
  三輪そうめんの特長は、極細、こし、つるつるとした喉ごし、が他産地の素麺より際だった特長でその歴史も古く1200年前と言われています。強力粉に塩を加え、油を塗りながら、こねと延ばす作業を繰り返し、より細く長く延べていきます。極上のものは、一束で150本。 断面の不規則な気泡がおいしい素麺の見分けかたの秘訣です。
  しかし近年、おいしいけれど胃にもたれる、油くさい、硬い、など特に女性には不人気となり売上も低迷していました。なんとかしたい、という三輪の製麺所から相談を受け、ここはまず女性に振り向いてもらえるそうめんにしようと、女性モニターによる商品開発を開始しました。使用小麦を強力粉から消化のよい薄力粉に変える。油を使わない。浸透性のよいモンゴルの塩を使う。水のクラスターにもこだわる。問題は細く長く切れずに延ばすこと。 試行錯誤の末、6回の熟成を重ね時間をかけて延ばすことで、ようやく三輪そうめんの特長である極細そうめんが完成。 また薄力粉で作ることで、古物よりも新物がおいしく、新しいメニューも開発中。夏を待たずに発売しましたが、売れ行き好調で夏まで持たないかもしれません。
  梅干し
  梅干しは、塩辛くて当たり前。 一定の塩分濃度を与えることで、梅本来の旨味が抽出されます。塩分濃度の低い梅干しは、その旨味が出てこないため、味付けをしているものがほとんどです。
  最近スーパーマーケットでは、梅干しが保冷棚に置かれていますが、全くナンセンス!古来より長期の保存食として、勿論常温で充分長持する梅干しがどこかでゆがめられ、低塩の梅干しという本末転倒な食品が出来あがってしまったのです。クエン酸による疲労回復作用や、殺菌効果など、様々に身体に良いとされる梅干し。そこに含まれる塩分もその一つで、塩が梅の旨味や効能を引き出し、私たちの身体にとっても必要な塩分の補給となるのです。塩分5%の梅干し!がもてはやされている昨今、昔ながらの製法で、塩分18%のしっかり塩を使った梅干しを発売したところ、最初の内は"なんだこんなしょっぱいの"とクレームがありました。しかしそのうち、そのクレームがリピートにかわり、本当においしい梅干し、としてお中元やお歳暮では、完売の人気商品になりました。
  お米
  お米離れにブレーキがかからない状態が、数年来続いています。ほんとうに、真面目に美味しいお米を提供しようとしない、安かったらいいでしょう、という販売者にも問題がある。お米は精米後30日以内に食べるのがおいしい。販売も精米後30日以内にしなければならない。でも、もし29日目のお米を購入してしまったら。その後ずーっと劣化していくお米を食べることになるのです。店頭では、お米は重いので、新しそうな下の方から取り出せないのをよいことに、古いものが上に乗っています。少量で充分だから、毎度炊きたての美味しいお米を食べたいという、年配ご夫婦の願いなど、どこ吹く風です。産地のしっかりとした、ほんとうにおいしいお米を作って提供したいと、茨城県では今、コシヒカリを越える品種が栽培中です。 また、琵琶湖湖北の棚田では、水路に琵琶湖の在来種二ゴロブナを放し、生育して水を抜くようになったら琵琶湖に返すという、生態系の維持も考えた稲作が行われています。そこで収穫されたお米は、環境米として市場に流通しています。
  中小スーパーマーケットの経営者とともに
 現在、オール日本スーパーマーケット協会に属する中小スーパーマーケットの経営者とともに、商品開発をしています。中小のスーパーマーケットは、2キロ商圏のお客様の顔が見えています。どんな人が住んでいて、何が欲しいのかもわかっている。なのに、その商品がない。自社で作ろうにも、自社だけではやはりたいへん。思いはあるものの、売りたい物、売れる物がない、という経営者の声を聞き、それではみんなで集まってやろうじゃないか、と。食材ごとにプランをたてて、メーカーとともに商品開発を行うプロジェクトを発足させました。まず協力メーカーのトップバッターは大阪スローフード協会会員でもある、日清オイリオグループさん。 地域に密着した生活者の欲しい物としての、おいしい油でおいしい揚げ物、など日清オイリオグループさんならではのオリジナルを開発していきたいと思っています。
  ビール戦争から学ぶこと
  昭和三十年代、飲食店を中心に圧倒的に市場を占有していたアサヒビール。起死回生とばかりに、その隙間をかいくぐって家庭をターゲットととしたことで、売上げの逆転を図ったキリンビール。さらにその後、ライト・辛口スーパードライで、キリンラガー一辺倒だった市場を再びアサヒに巻き返したアサヒビール。ハーバードMBAのケーススタディにもなっている有名なマーケティングストーリー。一瞬、市場を見誤る。気付いていても行動が伴わない。など、機を逸する様々な要因が、大きな逆転につぐ逆転というドラマを引き起こします。さて、これから第三のビールの時代、果たして次なる勝者は?
  この話はとても興味深く、かつ学ぶことが多い。市場をどう読むのか。MDとして、今の私の職業として、とても大切なことです。私は、まず消費者、しかも女性の声をしっかり聞きます。男性は気を使いすぎるのか、ぶれて本音が出てこない。食品を買うのは女性。買う立場の女性ターゲットを明確にし、そのターゲットに忌憚のない話を聞く。ボロボロに言われることもしばしば。でもそのボロボロこそが本音。ボロボロの流れがちょっとかわり始めたら、勝算有り!です。こだわりを極めた、特殊で高い商品ではなく、日常生活の中で、多くの方が普通に購入できる価格帯で、ほんとうにおいしい食品を提供する。それが私の使命だと思っています。
 大阪スローフード協会に期待すること
  今、世界的にも日本食がブームです。日本の伝統食・食文化が改めて見直される時です。大阪スローフード協会はまさにその一翼を担う重要な団体。私も顧問として、さらに活動の幅を広げるべく、出来るだけお手伝いしたいと思います。
  その後、活発で熱心、かつ具体的なたくさんの質問があり、予定時間をオーバーして会が終了しました。農家の方、小売店の方、企業の方、それぞれの立場でそれぞれに興味深い話は、なかなかつきることがなく、”是非また機会をつくって欲しい”という声をたくさん頂きました。

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